こん恋 ーstory001:Atsuko.

こんな恋を、用意しました。





いったい私は、
この人から何回
『愛してる』と
ささやかれてきただろう。

そんなことを、
大地を目の前にして思った。

「温子?」

うかがうような声に、
意識をこちらに戻す。

そうだった。
 
私はたった今、
ずっと一緒にいると
思っていた恋人に……

別れを、告げられたんだった。

「……あ、うん」

思えば、
会った時に気づくべきだった。

最近ずっと
おざなりだったデートが、
今日に限って
ちゃんと計画されてたこととか。

いつもは、
私が八割方話をするのに。
今日は、大地が
話の主導権を握っていたこととか。

付き合って、一年と少し。

ただ好きな期間が終わって、
心が安定する段階になった。

私は、そう思っていた。

だけどたぶん……
彼は、違っていた。

それを、今日知った。

『俺たち、別れない?』

大地は、
『愛してる』と
ささやくのと同じトーンで、
私にそう言った。

麻痺を、
していたんだと気づく。

この人からの
あいしてる
という5文字に、
私は安心しきっていた。

その言葉は、永遠に続くと。

ある種の
魔法かもしれない、
なんて思ってもいた。

そういえば、ここ最近。
私は聞いてなかったかもしれない。

この人からの、愛してるを。

何がきっかけか、
まったく思い当たらない
……とも言えるし、
すべての些細なすれ違いが、
少しずつ
壊していったのかもしれない。

そうも思える。

いつからか、
反対に私がささやいていた。

呪文のように。
引き止めるように。

ことあるごとに、
あなたに愛してると。

だけどあなたは、
その魔法に
かかってくれなかった。

「何を言っても、
もう決まってるのかな? 
大地の心は」

「……ごめん」

私が欲しかったのは、
謝罪じゃなかったんだけどな。

これが
決定的な言葉だってこと、
あなたは気づいてるかな?

――あいしてる

この言葉は、永遠じゃない。

有効期限は、
私が思っている以上に
短いものなんだと……

あなたと恋をして、
知ることが出来た。

そうでも思わないと、
この気持ちに決着がつけられない。

「……ねぇ、大地」

魔法がとける、
せめてその瞬間は、
自覚をしないと。

あなたからの
あいしてるが、今。

さよならに変わる。




story 001:

あいしてる

One,

東京の片隅に暮らしている、 シナリオライターです。 TwitterやInstagramでは 綴りきれない、思いや出来事を。 ラフに、のんびり。 そしてひとさじのぽっぷを加えて、 彩っていけたらと思っています。 よろしければ、こちらでも。 ゆっくりしていってください。 Twitter/Instagram account →popslow1985

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